PCP for PC98

↑戻る

目次

Ⅰ. PCP実行

1. 単結晶の面表示と原子間距離の計算

1.1 単結晶の面を表示

単結晶をある特定の面で切断したときの切断面の原子を表示します。単結晶はコンパイルしたデータファイルの中から選択してください。データファイル名の入力において、拡張子は必要ありません。

表示する単位格子の数
切断面の計算に用いる単位格子の数は、1、8、64、216の中から選択できます。単位格子の数が多いほどより明確に面のイメージをつかむことができますが、単位格子の数が多くなるほど計算には時間がかかります。特に、タングステンブロンズ構造など、単位格子中に含む原子の数が多い結晶では注意が必要です。
表示する元素
切断面の表示の際、表示する元素を選択することができます。例えば、酸素原子のみを表示するなどといったことが可能となります。すべての元素を表示しないといった設定はできません。
原子名の表示
切断面の表示の際、簡略化した原子名を表示するかどうかを選択します。原子名は、最初の1文字が原子の種類を表わし、次に続く数字がその原子の通番を示しています。この番号は単位格子の数が変わると変化しますので注意してください。表示の都合上、画面の上端及び下端の原子については原子名が表示されない場合があります。
原子を表示する際の陰線処理
原子を表示する際に陰線処理をするかどうかの選択をします。「陰線処理をする」を選択した場合、切断面から遠い原子は切断面に近い原子の影に隠れるように表示されます。陰線処理を行わない場合は、すべての原子が重ね描きされます。
原子の立体表示
原子を球のように立体的に表示するのかどうかを選択します。「立体表示をする」を選択した場合、他の設定によっては画面が見にくくなることもありますので、場合によって使い分けてください。「陰線処理をする」と組み合わせて使用することにより、結晶のより立体的な表示が可能です。
見たい面を表示する方向
切断面の表示方向を選択します。「正面」は画面と切断面が平行になる方向、「横」は切断面が画面と垂直になる方向です。「横」には「タイプI」と「タイプII」があり、「タイプI」と「タイプII」は90度の角度をなしています。より見やすい方向を選んでください。
原子を表示する範囲
切断面を0とした場合、切断面から何オングストローム(A)離れた原子まで表示するのかを決定します。面上の原子だけを表示したい場合は、0.2程度が適当でしょう。
見たい面の入力
表示したい面のh、k、lの値を入力します。(hkl)の入力は、例えば(100)は1,0,0のように間を,で区切って入力してください。1,0,0と2,0,0では、当然結果が違うので注意が必要です。続けていくつもの面を見ることができます。終了したい場合や表示用のパラメーターを変更したい場合は、0,0,0と入力してください。
印刷
印刷を行いたい場合は、印刷したい画面が表示されている状態でCOPYキーを押してください。画面のハードコピーをとることができます。

1.2 原子間距離の計算

単結晶中のある原子とある原子の間の距離を計算し表示します。切断面上の原子の間の距離を知りたいときに便利です。

表示する単位格子の数
原子間距離の計算では、「単結晶の面を表示」したときの「原子名の表示」によって表示された原子名を用います。そのため、この時の単位格子の数は、原子名の表示を行ったときの単位格子の数と同じにしてください。単位格子の数が違うと正しい結果が表示されません。
原子名の入力
原子名の入力では、「単結晶の面を表示」したときの「原子名の表示」によって表示された原子名を入力してください。例えば、O1とO13の間の距離を知りたい場合は、O1,O13と入力してください。原子間距離はオングストローム(A)単位で表示されます。終了したい場合は,と入力してください。

1.3 面表示の設定の読み込みと保存

単結晶の面を表示する際のパラメーターの入力の手間を省くために、パラメーターの内容をファイルとして保存したり、保存したファイルから読み込んだりすることができます。設定ファイルを上手に利用することにより、入力の手間をかなり省くことができるでしょう。

設定の読み込み
目的に応じて保存しておいた設定ファイルを選択してください。「表示する元素」が「一部」である場合、設定ファイルを作成したときの単結晶データファイル以外では、エラーが発生したり、正しく表示されない場合があります。御注意ください。
設定の保存
設定ファイルの名前には拡張子は必要ありません。パラメーターの入力では、設定したいパラメーターの値を順に入力してください。「表示する元素」を「一部」とした場合、設定ファイルを作成したときの単結晶データファイル以外では、エラーが発生したり、正しく表示されない場合があります。御注意ください。

2. 薄膜と基板のマッチングの表示

2.1 基板の選択

基板の原子配列と薄膜の原子配列のマッチングを表示する際の、基板として用いる単結晶を選択し、表示する面を指定します。

表示する単位格子の数
単位格子の数は、1、8、64、216の中から選択できます。単位格子の数が多いほどより広く面を表示することができますが、単位格子の数が多くなるほど計算には時間がかかります。
表示する元素
面の表示の際、表示する元素を選択することができます。例えば、酸素原子のみを表示するなどといったことが可能となります。すべての元素を表示しないといった設定はできません。
原子を表示する範囲
切断面を0とした場合、切断面から何オングストローム(A)離れた原子まで表示するのかを決定します。0.2程度が適当でしょう。
見たい面の入力
表示したい面のh、k、lの値を入力します。(hkl)の入力は、例えば(100)は 1,0,0のように間を,で区切って入力してください。1,0,0と2,0,0では、当然結果が違うので注意が必要です。0,0,0と入力すると中止します。

2.2 薄膜の選択

基板の原子配列と薄膜の原子配列のマッチングを表示する際の、薄膜となる単結晶を選択し、表示する面を指定します。

表示する単位格子の数
単位格子の数は、1、8、64、216の中から選択できます。単位格子の数が多いほどより広く面を表示することができますが、単位格子の数が多くなるほど計算には時間がかかります。
表示する元素
面の表示の際、表示する元素を選択することができます。例えば、酸素原子のみを表示するなどといったことが可能となります。すべての元素を表示しないといった設定はできません。
原子を表示する範囲
切断面を0とした場合、切断面から何オングストローム(A)離れた原子まで表示するのかを決定します。0.2程度が適当でしょう。
見たい面の入力
表示したい面のh、k、lの値を入力します。(hkl)の入力は、例えば(100)は1,0,0のように間を,で区切って入力してください。1,0,0と2,0,0では、当然結果が違うので注意が必要です。0,0,0と入力すると中止します。

2.3 基板と薄膜の表示

選択した基板と薄膜の面を重ねて表示します。薄膜の移動や回転、表示の拡大などができます。基板と薄膜の両方を指定していない場合は表示できません。基板か薄膜のどちらかだけを表示したい場合は、表示しない薄膜もしくは基板としてDUMを指定してください。

基板と薄膜の表示
基板の面と薄膜の面を重ねて表示します。「表示オプション」で表示方法の変更ができます。
薄膜の平行移動
薄膜だけを画面上で平行移動します。移動単位はピコメーター(pm)です(10pm=1A)。右と下の方向が正の方向となります。左や上はマイナスで表してください。例えば、薄膜を右に50pm上に100pm移動したい場合は、50,-100と入力してください。
薄膜の回転移動
薄膜を回転します。単位は度です。回転は右まわりが正となります。左まわりはマイナスで表わしてください。回転の中心は薄膜の中心となりますので、薄膜と基板を合わせるときは、まず回転移動を行い、その後平行移動を行ってください。
表示倍率の変更
表示倍率をパーセント(%)で指定します。100%で最初の大きさとなります。拡大したい場合は100よりも大きな数を、縮小したい場合は100よりも小さな数を入力してください。ここで0を入力した場合は、「倍率定数の指定」になります。倍率定数は基板や薄膜に最適となるような値となっていますが、基板と薄膜のマッチングをいくつか比較しようとした場合には、倍率定数をそろえておくと、縮尺が同じになるため、比較が容易になります。
表示オプションの指定
基板と薄膜を表示する際の表示オプションを指定します。一度指定したオプションは終了するまで有効です。表示オプションには以下のようなものがあります。

印刷
印刷を行いたい場合は、印刷したい画面が表示されている状態でCOPYキーを押してください。画面のハードコピーをとることができます。

2.4 ミスマッチの計算

基板と薄膜それぞれの原子間距離を比較することによって、基板と薄膜の結晶格子のミスマッチを計算することができます。ミスマッチの計算は、2.3の「基板と薄膜の表示」で見やすいように原子位置を調製してから行ってください。

基板と薄膜の原子の選択
基板と薄膜のそれぞれで、原子間距離を求めるための原子を2個選択します。画面に表示されている原子の番号を2つ選んで,で区切って入力してください。基板原子の選択時には選択した薄膜原子が、薄膜原子の選択時には選択した基板原子が塗り潰されて表示されるので、必要な原子を見つけることが容易になっています。
ミスマッチの計算
ミスマッチの計算では、薄膜と基板それぞれで選択した2つの原子から形成される2つのベクトルについて、差ベクトルの大きさとなす角度を求めています。なお、差ベクトルの大きさは、基板での原子間距離を用いて規格化しています。
データ処理
求めたミスマッチの値は、最大20個まで一時保存することができます。また、保存したデータの平均値を求めることもできます。

2.5 データの読み込みと保存

基板や薄膜の面のデータをファイルとして保存することができます。基板や薄膜を指定して面を入力し表示する場合に比べて、面のデータファイルから読み出す方がはるかに高速に面を表示することができます。よく参照する基板や薄膜の面はファイルに保存しておくことをおすすめします。

基板load / 保存してある基板データを読み込む
基板面ファイルの名前には拡張子は必要ありません。保存しておいた基板面ファイルを選択してください。
薄膜load / 保存してある薄膜データを読み込む
薄膜面ファイルの名前には拡張子は必要ありません。保存しておいた薄膜面ファイルを選択してください。
基板save / 現在の基板データを保存する
現在指定している基板の面をファイルとして保存します。基板面ファイルの名前には拡張子は必要ありません。
薄膜save / 現在の薄膜データを保存する
現在指定している薄膜の面をファイルとして保存します。薄膜面ファイルの名前には拡張子は必要ありません。

Ⅱ. 結晶構造ファイルの作成

結晶構造ファイルは、結晶系や原子の位置などのみを記録したファイルです。次の「化合物結晶ファイルの作成」で、この結晶構造ファイルを選択し、さらに各元素名や単位格子の大きさなどを指定することによって、化合物結晶ファイルを作成します。このように、結晶構造ファイルを化合物結晶ファイルと独立に作成することで、結晶構造が同じ化合物間で結晶構造ファイルを共有することが可能となり、データ入力の手間を削減することが可能となりました。

結晶系の選択
7つの結晶系の中から、該当するものを選択します。
分子式の決定
結晶構造に含まれる元素の種類、分子式中のそれぞれの元素の個数、単位格子中の分子数を入力します。例えば、ペロブスカイト構造はABC3と表わされるので、元素の種類はAとBとCの3種類、分子式中にAは1個、Bは1個、Cは3個含まれており、また、単位格子中には分子が1個含まれています(JCPDSカードではZに値が記されています)。
分子例の入力
代表的な分子の分子式を入力してください。それぞれの元素欄に該当する元素記号を半角英文字で入力してください。例えば、ペロブスカイト構造で代表例としてBaTiO3を入力する場合には、Aの元素にBa、Bの元素にTi、Cの元素にOと入力してください。また、この結晶構造や分子例に対して何かコメントを記しておきたい場合には、コメントの入力を行うことができます。
原子座標の入力
各元素について原子位置を入力します。この原子位置は、単位格子の各軸の長さを1とした場合の相対位置です。修正は可能ですが、後で間違いをさがすのは大変なので、値を間違えないように注意して入力してください。
結晶構造ファイルの保存
結晶構造ファイルの名前には拡張子は必要ありません。結晶構造が分かるようにファイル名を付けてください。
結晶構造ファイルの修正
作成した結晶構造ファイルに間違いがあった場合や、ある結晶構造ファイルを参照して新しく結晶構造ファイルを作成する場合には、結晶構造ファイルの修正を選択してください。修正項目が一覧ででますので、修正が必要な項目については、上にある項目から順番に修正を行ってください。修正後に保存する場合、ファイルを上書き保存するか別名で保存するのかを選択することができます。

Ⅲ. 化合物結晶ファイルの作成

結晶構造ファイルを選択し、さらに各元素名や単位格子の大きさなどを指定することによって、化合物結晶ファイルを作成します。

結晶構造ファイルの選択
該当する結晶構造の結晶構造ファイルを選択します。該当する結晶構造ファイルが存在しない場合は、先に「結晶構造ファイルの作成」を行ってください。
単位格子の決定
各軸の長さや角度を入力します。軸の長さの単位はオングストローム(A)、角度の単位は度です。格子が歪んでおり、本来の構造から軸の長さや角度が少しずれているものについては、軸の長さや角度が一覧表示されている確認画面でNoを選択することにより、修正を行うことで対応してください。
分子式の入力
分子の分子式を入力してください。それぞれの元素欄に該当する元素記号を半角英文字で入力してください。例えば、BaTiO3を入力する場合には、Aの元素にBa、Bの元素にTi、Cの元素にOと入力してください。ここで元素記号の代わりにOHやNH4などのいくつかの原子団名を入力することもできます。また、元素が存在せず空孔となる元素欄には、原子名としてDUMを入力しておいてください。また、入力した分子に対して何かコメントを記しておきたい場合には、コメントの入力を行うことができます。
分子式の変更
入力した分子式について、各元素のイオン半径、表示色、表示記号の一覧が表示されます。これらの値を修正したい場合には、確認で変更を選択してください。また、表示色や表示記号が重なる元素が存在する場合には、必ずどちらかを変更して重なることがないようにしてください。
化合物結晶ファイルの保存
化合物結晶ファイルの名前には拡張子は必要ありません。通常は分子式をファイル名にしてください。

Ⅳ. 環境設定

PCPを動作させる上での環境の設定を行います。設定項目には、次のようなものがあります。

表示イオン半径の割合
各原子を表示する際、実際のイオン半径の何パーセントで表示するのかを決定します。通常は35%程度を指定してください。
データディレクトリの設定
結晶構造ファイルや化合物結晶ファイルを置くディレクトリを指定します。
プレーンディレクトリの設定
薄膜や基板の面データファイルやパラメーター設定ファイルを置くディレクトリを指定します。

Ⅴ. その他

その他の項目について説明します。

著作権など
各プログラムの著作権は「よせ鍋」が所有するものとします。なお、作者はこのプログラムによって生じたいかなる被害・損害に対しても、責任を負いません。
また、PCPによって作成した「結晶構造ファイル」や「化合物結晶ファイル」の著作権はそれぞれの作者に帰属されますが、ソフトウェアの性格上、これらのファイルに対しては誰もが自由に使用できるように、作者の方々のご協力をお願いいたします。
最新版
PCPの最新版はウェブサイトにて公開しています。
(PCP for PC98は現在サポートを休止しております)


↑戻る

ご意見等は管理人(webあっとyosenabe.com)まで