お茶は、日本人にとって、最もなじみのある飲み物の一つである。
狭義には、お茶とはチャノキの葉や茎からお湯や水などで成分を抽出して得られた飲み物ということになるだろうか。
発酵の有無により、緑茶、ウーロン茶、紅茶などに分かれる。また、緑茶もさらに、加工方法によって、煎茶、焙じ茶、抹茶などに分かれる。このように、一言でお茶といっても、かなりのバリエーションが存在する。
しかも、広義には、お茶とはチャノキ以外からも作られる。以前に、『「お」の付く言葉』で述べたように、お茶も「集合を表す言葉」の一つである。そのため、いろいろな植物から成分を抽出した「お茶」が存在する。
なじみ深いところでは、麦茶、そば茶、玄米茶など、少し変わったところでは、杜仲茶、ルイボス茶、ドクダミ茶など。最近はハーブティーにもいろいろな種類があるし、中国茶にも菊花茶などがある。海藻では、昆布茶がここに含まれる。
余談だが、コーヒーも、この意味ではお茶に入りそうなのだが(豆の焙じ茶みたいなものだ)、なぜだか別カテゴリーとして扱われているようだ。もっとも、「お茶しにいく」と言って、コーヒーを飲んだりするのだから、よいのかもしれないが。
さて、「植物から」と書いたけれど、実は植物以外を使ったお茶もいくつか存在する。例えば、椎茸茶(念のため、キノコは植物でなく菌類である)。これもれっきとしたお茶である。
しかし、椎茸茶は、お茶というよりも、むしろ出汁という感がある。ならば、昆布茶も同じ「出汁茶」カテゴリーかもしれない。
ところで、出汁といえば、忘れてはならないのが鰹節。これを使えば、鰹節茶も実現できる気がする。鰹節以外の魚節でもよいし、煮干しでもよいだろう。あまりきいたことはないが、それなりにいける気がする。昆布茶とブレンドしてもよいかもしれない。
また、お茶の定義を、鰹節などを含むように、「動植物などから」お湯や水などで成分を抽出して得られた飲み物とすれば、世界をもっと広げることができる。例えば、鶏ガラや豚骨などからも成分を抽出して飲み物を作ることは可能だ。油分を取ったり塩分を加えた方がよいかもしれないが、それはそれで何とかなるだろう。
こう考えると、人類はずいぶんとたくさんのお茶を作り出してきた。気軽に飲める、具のないスープである。
まだまだ、新しいお茶は増えていきそうだ。楽しみの幅が広がることは、豊かなことである。
了