デナリ

マッキンリー山を擁する巨大なデナリ国立公園。四国よりも広い面積の土地が、まったく手つかずのまま残されています。ここでは野生の動物たちが主役。人間は客。いや、石ころに過ぎません。冬になると実質的に閉鎖されるこの国立公園では、自然という言葉が、その本来の重みをもって人に問いかけてくる土地でもあります。そんな自然をこれまで守ってきた苦労はきっと大変なものだったことでしょう。でも、だからこそ、これからも残していかなければならないものなのだなと、強く思ったのでした。

マッキンリー山
天気と運がよければ遠くからでもマッキンリー山の姿を見ることができるようなのですが、この巨大な氷の山は独自の気候を持っているとのことで、ほとんどは厚い雲の向こうに隠れています。今回は最後まで地上からはその姿を見ることができませんでした。しかし、行きの飛行機の中から山頂をかいま見ることができたのは幸運でした。マッキンリー山の近くまで行く飛行機ツアーもあるようです。これならば(飛行機さえ飛べば)確実にその姿を見ることができます。
野生動物
写真
デナリでは、国立公園の中を横切るただ1本の道をバスで行くツアーに参加しました。国立公園の中へは、ツアーでないとなかなか入ることができないのです。このツアーでは、雄大な自然の中で、優雅にそして必死に生きている動物たちの姿を直接見るという貴重な体験ができました。遙か遠くの山麓に張り付く白い点ドールシープ。木立の陰から肩をのぞかせたムース。樹のてっぺんにとまったフクロウ。バスの横で愛嬌を振りまくホッキョクジリス。そして何より今回の愁眉はグリズリーベア。このツアーで、のべ11頭、計9頭のグリズリーベアを見ることができました。しかも1度はバスの真横から、ちょうど席の横にグリズリーベアの親子が現れたのです! 静かにしなければならない車内も、当然ものすごい興奮に包まれました。グリズリーベアはゆっくりと歩み去っていきました。そしてその余韻が、全てだったのかもしれません。
紅葉
デナリの秋は非常に短く、紅葉のさなかに雪が降り出すことも珍しくありません。当然、紅葉の時期は短く、不定期でもあります。行った時期は運よくちょうどデナリの短い秋の真っ盛りでした。森林限界付近の土地のため、背の低い針葉樹がまばらに生える土地は、しかしベリー類や柳といった低灌木が生い茂る土地でもあります。紅や黄に染まった大地の中に点在する緑の木々。見渡す限りの大パノラマ。とても言葉では表現できないくらい、それはきれいで美しく不思議な景色だったのです。