小さな迷子の物語

[ あとがき ]

 ペットが逃げたという話はよく聞きます。
 しかし、彼らは自然の中で育ってきたわけではないので、よほどのことがない限り、そのまま生きてくことができません。
 餌の取り方も、天敵からの逃げ方も、安全な夜の過ごし方も習ってきていないのですから、当たり前ですよね。
 それは、人が彼らをペットとして育ててきたため。
 そんな彼らに偶然出会ったとき、あなたはどうしますか。
 警察に預けても、飼い主が見つからなければ、最後には殺処分となります。
 そのまま追い払っても、ほとんどの場合は死んでしまいます。
 だからといって、飼うことはかなりの労力と時間を必要とします。
 どの選択をすることが正しいのかということではなく、ただ、その選択の結果についてまで、選択したことの意味を知っていてほしいと思うだけです。
 なぜなら、彼らは何も頼るものがない状態であなたの前に現れているのですから。
 一方で、飼い主にも問うことはあります。
 生き物を飼うという責任は非常に大きいものです。捨てるなどという行為は問題外ですが、不注意で逃げ出したのであっても同じことです。どんなに悔いても、時を戻すことはできません。彼らの命を守る責任は、飼い主にあるのです。
 逃げたペットは自然の中では生きていくことができません。
 それは、人間が生き物をペットとして飼うという行為に対しての、不可避な代償です。
 だからこそ、すべての人に、命に向き合う真摯な姿勢でいてほしいのです。
 もちろん、私にできることにも限りがありますし、行った行為が正しかったのかも分かりません。
 でも、命の大切さを、本当の意味で感じられたことは、きっとよかったのだと信じています。
 もうそんな子たちが、これ以上増えないことを願って。
 そして、奇跡が少しでも起こりますようにと。