いつも、独りで自然の中に身を浸すとき、何とも言えない感覚を味わっています。
歩く私の周りには、静寂と芳醇が満ちています。自分の境界が広がって、自然と一体になるような錯覚を感じます。そんな感覚を楽しみたくて、私は野山に向かうのでしょう。
最近よく思うのは、私の指向は「登山道」よりも「トレイル」なのだなということです。
ピークを目指すことは必須ではなく、登頂よりも縦走を好みます。登山道もトレイルの一部としてとらえいます。
以前に「山へ向かおう」でも書いたように、私の望みは「向こう側の景色が見たい」なのです。道を進むにつれて変わっていく風景を楽しむことが、モチベーションになっています。
そして、実のところ、向かう先が野山でなければならないということもありません。
大自然の中の方が、確かに素晴らしい景色に出会える機会は多いのでしょう。
でも、少しだけ郊外に出てみれば、意外と自然はあふれています。
住宅地の町並み。町外れの田園。街路樹や看板も、風景の一部です。
大切なのは、どこへ行ったかや何を見たかではなく、何を感じたかです。
気をつけてみれば、人以外の生き物たちの息吹に満ちていることに気付きます。
人の住むところなら、何らかの道がつながっています。それは、登山道のような苦労をしなくても歩くことができるところがほとんどです。
私はこれを「街なかトレイル」と呼んでいます。
「自然の中を」歩くより、「自然に触れて」歩くを重視します。
登山道、トレイル、街路。いろいろな道があります。必要な技術、装備、覚悟などは異なっているけれど、これらの境界は、シームレスに繋がっていると思いませんか。
「街なかトレイル」の歩き方は、基本的には自由です。なので、ここでは、私の考え方を紹介します。
さあ、気楽に歩きはじめましょう。
家の前の道から出発してもいいし、少しだけバスや電車に乗って出かけてもいい。
お弁当とお茶を持って、普段歩いて通らないところを歩いてみましょう。
そこには、見たことのない景色が広がっているはずです。
これが「街なかトレイルのススメ」なのです。
了