自然の造形には驚かされることがよくある。
風景・景色はもちろんのこと、生物についてもだ。そしてそれが、微生物や小動物ではなく、大型ほ乳類ともなればなおさらである。
白黒で愛らしい外観の生き物。そう、ジャイアントパンダ(いわゆるパンダ)である。
動物園でも大人気であり、形容詞としては「かわいい」が似合う。幼児体型のような全身バランスと、垂れ目のように見える目のまわりの模様が、人にそう思わせるのだろう。
しかし、人間にとってかわいらしく見えても、野生の中でその外観が役に立つとは限らない。むしろ、悪目立ちしそうな気もする。もしもパンダが遙か昔に絶滅していて、化石でしかその痕跡を知ることができなかったとしたら、今のような外観を誰が想像できただろうか。
そう思って、外表面が白黒である大型ほ乳類を思い出してみたが、シマウマ、マレーバク、イロワケイルカなど、それなりにいることに改めて驚いた(ホッキョクグマは、白のみということにしておく)。意外だが、この色分けが自然界ではカモフラージュになったりするのだろうか。
もちろん、すべての生き物が人間と同じような色彩感覚で世界を見ているわけではないので、これはこれでよいのかもしれない。人間とはまた別の豊かな色彩の世界があるのだろう。そういった感覚を知りたいと思うも、それは叶わぬ夢である。
もっとも、これまでのパンダにとって、この白黒模様がどの程度役に立ってきたのかはわからない。現在の生息地は、中国内陸の一部山地に限られている。栄養価は低いが手に入りやすい竹・笹を主食とすることで、何とか現代まで絶滅せずに生き延びてきたのかもしれない。
とは言え、現代のパンダにとって、この白黒模様は大いに役に立ってる。パンダの最大の天敵は、人間である(一時は乱獲のために数を減らした)。しかし、今は人間がパンダの保護を訴えてくれるし、実際に保護が進められている。
何と言うことはない、結局、「かわいいは正義」なのである。
了